イーナは泣くことができなかった

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「ご主人さまのことをどのように呼べばよろしいでしょうか」  ひとつ目の質問にドキリとした。  さまざまな項目を自分好みにカスタマイズできるのは今も昔も変わらない機能だが、自分が自分の呼称を要望するとなると、なかなか気恥ずかしい。  要はゲームを始めるために主人公の名前を入力するのと同じなのだと考え直し、希望の呼び名を送信する。 「かしこまりました。以後、ご主人さまのことはイーナさまとお呼びします」  オンラインゲームで使っているサブキャラクターの名前だ。  メインアカウントのシューニャよりも新鮮味があり、現実の人間関係も、オンライン上の人付き合いも、この名前には付随しないという利点がある。  その後、彼女自身の名前だとか、一人称だとか、話し方だとか、こまごまとした設定が終わると、私と彼女との共同生活が始まった。
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