新歓って新入生を歓迎する気ない説

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委員長会議から五日経ち、今日は新入生歓迎会が行われる。この五日間俺は美化委員の仕事やら相談教室やらで忙しくしていて、生徒会と接触することはなかった。 ただ、風の噂では生徒会は転校生に構いすぎて仕事を放棄していると聞く。 本当にただの噂だから信憑性は低く、榊原はともかく浅海はしっかりしているし仕事を放棄するなんてことはないと思いたい。 「裕一郎~、そろそろ体育館に行こ~」 涼斗に誘われて二人で体育館に向かう。図書委員は今回、美化委員と一緒に清掃するため涼斗は新歓を楽しむ気満々らしい。 体育館につくと既にほとんどの生徒が集まっていて、ザワザワとそれぞれに話をしている。 そんな中、浅海が壇上に立った。生徒は話を中断して、浅海に黄色い歓声を送る。嫌な噂が出回っているというのにこの人気っぷりはさすが。 「静かにしてください。これから新入生歓迎会開会式を行います。今年の新入生歓迎会は皆さん知っての通り鬼ごっこを行います。まずルール説明をお願いします」 そう浅海が言って壇上をおりると、変わって生徒会会計の一ノ瀬理久が上がる。そして再び浅海と同じくらいの歓声があがる。 「はいはい、みんなありがとうね~!じゃあルール説明はさっちゃんに変わって俺がするよ~?えっとねー、まず逃げる側と鬼側に別れるんだけど、逃げる側は出席番号が奇数、鬼側は出席番号が偶数になりまーす。ってことで体育館の右半分を逃げる側、左半分を鬼側になるよう移動してくださーい!順番とかないから適当に座ってってね~」 みんな一斉に立ち上がり、移動し始める。ちなみに俺は出席番号が奇数のため逃げる側の右に移動する。涼斗は偶数のため鬼側だ。 「僕が裕一郎のこと捕まえてあげる~」 「精一杯逃げるわ」 涼斗と別れて俺は右側の隅の方に座った。知り合いが誰かいないか辺りを見渡すと、転校生がいた。転校生の隣には飯島仁の弟がいる。 「うんうん、みんな移動できたみたいだね~!じゃあルールの続きを説明します!まず今から逃げる側のみんなにある装置を配るから腕に着けてね。あと鬼側の子にはカードを配るよ~。なくさないようにね」 配る係は広報委員が担っていてひとりひとりに丁寧に渡していく。俺は梅宮から装置をもらった。その時梅宮は「…ぐふ……ぐふふ…っ」とニヤニヤしながら渡してきた。殴り飛ばしたい。 一ノ瀬は逃げる側が全員腕に装置をつけたのを確認して口を開いた。 「その装置を外した時点で失格になるからね。気をつけてね~。鬼側のみんなは逃げる側の子たちが今つけた装置に今から配るカードをかざすことが出来れば『捕まえた』ってことになるよ!いないと思うけど逃げる側の子たちは捕まえられないように装置に布を巻き付けたり手をかざしたりしたら電気流れる仕様になってるから注意~!」 サラッと恐ろしいことを言う一ノ瀬に逃げる側は顔色が真っ青になっていく。だが下手なことをせず鬼ごっこを楽しめということなんだろう。 「鬼側は好きなだけ逃げる側の子を捕まえることが出来ます!逃げる側の子は捕まったらその装置が赤くなるから体育館に戻ってきてね。逃げる範囲は学校内限定で校舎の中に入っても大丈夫だよ。 さてさて!ここからがみんな気になってる勝者の特権を説明します!!」 その言葉を聞いてみんな「ヒュー!」「待ってましたー!!」なんて歓声を上げ始める。生徒たちにはこの勝者の特権が目当てなのだろう。
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