プロローグという名の説明

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夕日が教室を橙色に染め、サラサラと優しい春の風が入り込む。 カモミールティーの匂いと味を楽しみながら今日こそゆっくり過ごすはずだった。 「ど、どうすれば振り向いてもらえるでしょうか…?」 そんな俺の優雅なひとときを消し去ってよくもそんなクソみたいなことを言ってくるな、と声の主にバレない程度に睨みつける。 そんなこと俺の知ったことではないし、告白してしまえばいいだけの事をいちいち聞いてくるチワワのような男に呆れてモノも言えない。正直今すぐカモミールティーをこいつの頭にぶっかけて美化室から追い出してやりたいが、そんなことをすれば二年間培ってきた人気やキャラが崩壊してしまうからやめておく。 「…そうねぇ〜、じゃあ髪型とか少しだけ変えてみたら?」 「へ、髪型ですか?」 「ええ、少しでいいのよ。例えば髪を耳にかけたり、縛ったり…そのくらいでいいの」 「どのような効果があるんですか?」 「少し雰囲気が違うだけでオトコって結構トキメいちゃうものなのよ」 知らんけど。 「そうなんですね!やってみます!!ありがとうございます!」 そう言ってチワワのような男はパタパタと美化室から出ていった。こんなことくらい自分で考えれば良いのに何故わざわざ聞いてくるのか不思議でならない。ちなみにこのような質問は今日だけで七人目だ。これが毎日のように続くわけだから本当に疲れる。まじで勘弁して欲しい。 そういえば自己紹介がまだだったか。 高校三年生の美化委員長、藍田裕一郎です。皆さん既にお察しの通りオネエ演じてます。
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