- 昔語リ - 鵺の泣く宵

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これは、今は昔 遡る事、都の時代のお話です。 当時、奇々怪々なる妖や魑魅魍魎に怯え暮していた人々は 西の国に都を築き、そして寺社仏閣を創建し 結界の内にて、恐怖のない豊かな暮らしを送っていました。 田畑は実り豊かに、都は美しく栄え そこは、まさに雅の国の名にふさわしいものでした。 しかし、そこには元々住んでいた妖たちがおりましたが 神卸(かみおろし)や高僧(こうそう)たちによって、 その住処(すみか)を追いやられてしまいます。 人間とは異なる姿をした彼らは、人々から酷く恐れられ 敵意を持たない者までもが殺されました。 それを見かねた東三条の森の主である鵺は 陰陽師に説得を試みようと、自ら都へ出向きます。 鵺は、人間に姿を見て怯えさせぬよう、 黒雲に身を隠し出向きました。 それは、彼なりの人々へ対する気遣いだったのです。 しかし、黒い雲と共に現れた鵺を見た人々に 襲いに来たと勘違され その命は大内裏(だいだいり)にて、討ち取られてしまいます。 『 いつか、人と妖が共に理(ことわり)を分かち合える現(うつつ)を、 この目に納めたい 』 人間と共に暮らす桃源郷を想い描いていた鵺は 命の灯(ともしび)が消える前 悲しみと無念の泣き声を、都中に響かせました。   主の最後の咆哮(ほうこう)を聞いた妖たちは、悲しみと怒りに満ち 次第に増していく人間への憎悪を抱きながら まるで百鬼夜行の如く都になだれ込み 寺社仏閣、お内裏(おだいり)各所に爪痕を残しました。 妖の反乱を聞きつけ、陰陽師が来る頃には 人間と妖の桃源郷はもうすでに、手に届かぬところまで離れ 今に至るまで、彼らの存在は人々により 遠のかされたのでした。 さて、貴方はここにいる妖の私を どう見つめるのでしょうか。 - 終 -
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