フラットホワイトの甘美な誘惑

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 私とフラットホワイトの出会いは、ニュージーランドであった。ニュージーランドへ行く前はコーヒーがあの何とも言えない酸味のある苦味が苦手であった。後に知ったのだが、こういった苦味のコーヒーはチェーン店に多かったなと今では思い返せる。やはり今でもコンビニコーヒーやチェーン店のコーヒーは今でも受け付けられない。  このフラットホワイト、普通のカプチーノなどとは異なる点がある。ミルクのフォームの厚さである。カプチーノはフォームがモコモコしているのに対して、フラットホワイトはフォームが薄い。そしてミルクとエスプレッソがよく混ざりあうのである。故にコーヒーの苦味を抑えつつ、ミルクの味も楽しめる訳である。なによりニュージーランドはコーヒー激戦国だけでなく、国民一人ひとりが自身の好みのカフェがあるのである。  フラットホワイト。自身にとって、どれだけ忙しく働いている中でも月一回のフラットホワイトは格別である。一口目からカプチーノのようなモコモコ感は無い故にコーヒーの味とミルクの混ざり具合を楽しめる。その瞬間に自分は一ヶ月間溜めに溜まった疲れや対人、業務上のストレスが体から抜き取られる感覚を毎回、覚えるのである。そしてただただコーヒーという飲み物により何もかも頭の中から忘れさしてくれるおかげでその時だけの感覚は誰かと話している時よりも幸せそのものである。単純に一人で旅行やら外食、とにかく一人ですることが多い。こういった事も一人でフラットホワイトを飲めて何も考えずにいることができる為に幸せを感じる要因の一つであるかもしれない。月に一回の幸せであることは何事にも置き換えられない。  幸せを感じるのであるのに何故に月に一回だけなのか?と思われる方も多かれ少なかれおられるでろう。自分の憶測だが、お気に入りのカフェが遠い、仕事が忙しいから等々考えられた。答えは全てNOである。てんかんという病気が関与している。カフェインというのは、アデノシン酸とアデノシン受容体が連結すること阻害するのである。カフェインとアデノシン酸の構造式が似ている為である。つまり受容体にカフェインが結合すると、覚醒状態になり眠気や疲れを一時的に感じなくなるのである。言い換えれば一種の軽い麻薬みたいなものである。てんかんは覚醒状態に陥ると発作が起こりやすくなる。脳内では常に電気が走っており、薬で電気の発生を抑え込んでいるのである。これは眠気との戦いにも発展するのである。  今は月に一回の幸せであるが、新入社員として出来たてホヤホヤの新商品がパン屋の陳列棚に並んだはいいものの全く売れない時期があった。それ位に仕事が辛く、心療内科に通うまで心身的に疲労困憊していた時期があった。その時は何度も何度も、フラットホワイトに救われた。仕事をする為ではなく、フラットホワイトを飲む為だけに生きていたと言っても過言ではない。行きつけのカフェは実家からも近く、当時住んでいた寮からも近かった。朝番から翌日が遅番の時は必ず、そこへ足を運び夕飯といつもの飲み物で締めていた。休みの日は可笑しかった。朝、朝食を食べに行きフラットホワイトを何杯も飲みつつ、気付いたら昼時。昼食を食べる。デザートにはケーキといつものを。トチ狂っていた。
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