フォトンとニュートリノ

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 坂の傾斜が、ここから一気にきつくなる。  さあ、ラストスパートだ。  私はサドルから腰を上げる。ペダルを踏みしめるタイミングに合わせて、左右に車体を振る。立ち漕ぎ(ダンシング)。  サドルに悠然と座りながらよろよろ走っている大学生のママチャリを、続けざまに3台追い抜いて、私はようやく坂を上り切った。大学まで約2キロ続くこのだらだらした上り坂は、朝のこの時間、自転車通学する学生が列をなしている。  今のところ、私がここで自転車で追い抜かれたことは一度もない。と言っても別に自転車競技をやっていたわけじゃない。高校時代、3年間往復50キロのアップダウンある道のりを毎日通っていただけだ。その当時に比べれば、今はアパートから大学まではたったの3キロ。もう余裕過ぎるくらいだ。  だから、一応頭にはヘルメットをかぶっているものの、着ているのは高校時代と変わらない、普通のジャージ。たぶんレーパン(レーシングパンツ)履いたらもっと速いんだろうけど、通学にそこまでガチな恰好することもないだろうし、そもそもそんなもの持ってもいない。  駐輪場に愛車のロードバイク、ビアンキカラー(チェレステ)のビアニローネを停めてしっかりチェーンロックをかけると、私は一限の講義がある教室に向かった。 ---
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