ブランコのような日々

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ブランコのような日々

妹が死んだ。 秋葉が死んだのだ病気で、 母と同じ病気で… 医者からの話だと親から子への心臓の遺伝子性の病気らしい。 妹が最後に言った言葉は「死にたくない」でも「生きたい」でもない。 妹が最後に言った言葉は。 「お、お願い…泣かないで……」 「ひ、人を…し、しん…じて、、、」 そして妹は息を引き取った、最後は自分のことではなく、僕のことだった。 そのあとすぐ医者から言われた近い将来僕も死ぬと。 一晩中泣いた、泣いて泣いて全てがどうでも良くなった。 自分が死ぬの宣告より妹の死のほうが受け入れられなかった。 医者はきっと治ると言われた。 だが信用出来なかった、あんたは僕の妹『秋葉』を助けることが出来なかった。それだけでもう十分だ。 そして僕は人を信用しなくなった。 それから毎日考えた。 もしこの感情がなくなれば、周りが白黒なれば悲しいことが無くなると。 その日から僕の人生の歯車は壊れ始めた。 何かもどうでも良くなった、学校にも行かず家でずっと丸々日々。 食べることも寝ることも体が拒否をする。 暗闇に落ちていく、視界がモノクロになっていく。感情が無くなっていく。 「アハハハハっアハハハハ…」 どんどん僕が願った展開になっていく、感情を無くし、白黒の世界。 これほど嬉しいことはなかった。 そして僕はついに禁忌を起こそうとした。 そう覚せい剤だ。 これでようやく妹とまた会えると思った、またあの時みたいな楽しい日々に。 そして僕は腕に注射器を当てた。 だが手が震えた、震えたのだこの僕が。 一呼吸置いて僕はまた注射器を構えた。 するとドアが勢いよく開いた、そして中に入ってきた人物は妹の幼なじみの『結衣』だった。 「なに、しているんですか?お兄さん」 恐ろしいほど冷静な声に一瞬注射を打つのを躊躇ったが、すぐに我に返った。 「なにって妹に会いに行くんだよ…あと少しでまた楽しい日々が、、、」 「そんな日々なんてもう帰ってきませんよ、秋葉は死んだんだから」 死んだ?秋葉が死んだ?どういうこと? わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない………… わかりたくない。。。 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい… 心の中で何度も繰り返した、まるで自分を洗脳するかのように。肯定するかのように。 「…さい…うるさい!秋葉は……まだいき!」 「もう生きてません、もう気づいてください…あなたの妹は死んだんです」 聞きたくない。秋葉は…秋葉は… 僕の頭の中でたくさんの情報が駆け巡る。それは数え切れないほど膨大な思いだった。 「はははは、そっか秋葉は死んだ…死んだ…」 受け入れた、僕は秋葉の死を受け入れたのだ。そう秋葉は死んだ。 なら僕が兄として出来ることは1つ。 墓参りでも謝罪でもない死だ。 僕はその足で長く締め切っていたカーテンを開けた、窓からは激しく光る太陽が僕を憐れむかのように照らしてくる。 自殺を煽るかのように。 「秋葉…もう大丈夫、お兄ちゃんもそっち行くから」 「お、お兄さん…?何を…」 さっきとは打って変わって結衣は困惑した表情をしていた。 だがそんなこと知っちゃこっちゃない。 僕は窓に足をかける、そう足をかける。 これでようやく妹に… 「見てわからない?2階から自殺するんだよ、そうすればずっと秋葉と一緒にいられる、また楽しい日々に…」 「馬鹿なこと考えないでください!秋葉はそんなこと!」 「な、何がわかるんだよ!秋葉は死んでそして僕も時期に死ぬ、母と妹と同じ病気で!もう希望なんてないんだよ…」 そう僕はどうせ二十歳になる前に死ぬ、なら今死んでもいいんじゃないのか? そうだ今死んでも誰も僕を責めない。 「秋葉はそんなこと望んでない!」 「お前に何がわかるんだよ!秋葉と僕の何がわかるんだ!」 どうして僕の人生は最後まで上手くいかないのだろうか。 死ぬことも許されないのか? どうして… 「にを…何を知っているんですかお兄さんは!私が今までどういう気持ちで過ごしてきたか!」 「関係ないだろ!もうほっといてくれ…」 結衣泣き始めた、一粒流れたのを合図にボロボロと大粒の涙が流れた。 「関係…関係あります、私は…お兄さんのことが大好きだからですよ!」 「は…バカじゃあないのか!こんなときに言うなんて!」 「バカはお兄さんの方です!私の気持ちなんて考えずに死のうなんて…そんな許しません…」 涙を一生懸命手で拭い結衣はそれでも僕の前に立つ。 「秋葉が言ってました…お兄さんのことをお願いって、それなのにそれなのに…お兄さんは秋葉の最後の願いも踏みにじるんですか!そんなの兄なんかじゃあない!」 その言葉に僕は狼狽えた、そして同時に死に対して恐怖を感じ始めた。 「、だから…死なないでよ!もっと一緒にいてよ!私を見てよ!秋葉のことをちゃんと考えてよ!」 「秋葉から…最後の伝言」 『お兄ちゃん、人を信じるのをやめないで…』 そのとき僕はようやくわかった、秋葉がどんな思いで僕に最後の言葉を言ったのか。 僕は兄失格だ… 「ゴメンな…ゴメンな秋葉……俺は僕はお前の最後の思いまで殺そうとしていた…」 気づくと僕の目からは涙が零れていた。 一番いらないと思った感情が今涙となり、零れている。 「お、お兄さんは本当にバカです…私の言葉じゃあやめようとしなかったのに、秋葉の一言で正気に戻るなんて…卑怯です」 結衣はその場で崩れ落ちた。 そしてそれを支えるかのように僕は結衣の傍に寄った。 「ごめん、結衣…迷惑かけて、、、」 目を合わせることが出来なかった、だが結衣は僕の目をずっと見続けた。 「ほ、本当ですよ…だから責任とってください…」 そう言うと結衣は僕の頬に優しく触るかのようにキスをした。 それを何を意味するかはわからないが思わず頬を抑えた。 「これが私の気持ちです…一ノ瀬 紫樹君。」 秋葉、お前のおかげでわかった。 人を信じることの素晴らしさ、そして人の温もり。 ブランコのように止まっていた時間が今ようやく乗る人が現れ、また動き始めた。 止まっていた歯車がまた回り始めた。 お前のところに行くのはまだ先かもしれないが、そのときまで待っていてくれ。 今度は僕が長い長い人生の話をするよ。
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