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「ごめん」
私のスマホのバイブの音だ。お互い目を合わせず離れるとそのままスマホを確認する。
「お母さんからみたい」
電話に出る。
『ママいつかえるの?』
「僚君?」
『あ、もしもし玲子?邪魔してごめんね。僚ちゃんがどうしてもママとお話したいって言うから』
「あぁ。大丈夫だよ。もう食べ終わったから今から帰るから」
『そう。気をつけて帰ってきてね』
スピーカーの向こう側でやったーと喜ぶ僚田の声が聞こえる。
「うん。ありがとう」
電話を切ると私は秀二と目が合い頬が緩んだ。
「家に帰ろっか」
秀二は、「そうだね」と言いそっと手を出した。
私は、飛びつくように手を繋ぐとゆっくりと歩き出した。
後少しだけ……もう少しだけこうさせて。この魔法が解けるまで。
「また忘れられない思い出になったね」
「それ言うな」
お互いに見つ目合うと二人してカラカラと笑い声を上げた。
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