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席に着くと周りを見回す。二十席程ある店内は、半分程埋まっていた。中でもこの外の街の夜景が一望出来る窓側の席は全て男女のペアで埋まっている。
ドリンクのメニュー表を貰うと私はカシスオレンジで、秀二は車だからとノンアルコールのシャーリーテンプルを頼んだ。
「ねぇこの席ってもしかしてプロポーズの時に座ったよね?」
「あ、う、うん。そうだな」
秀二のぎこちない応対に私は訝しげに見た。
「ど、どうしたんだよ」
ははーん。こりゃ何か隠してるな。十年妻やってきた私にバレないとおもってるのかな?でもここは気づかないふりしとこう。
その時丁度ウェイターがカクテルを持ってきた。私はグラスを手に取り掲げると秀二もおずおずとグラスを差し出し乾杯する。グラスを重ねるとチンと響いた。そして一口飲む。
「わぁ美味しい」
普段は子育てに追われゆっくりとお酒を飲む暇が無いからこうしてゆっくりと飲めるのは本当に久しぶりで数段美味しく感じられる。私も歳とったなぁと考えた瞬間目頭が熱くなり誤魔化すように目を揉み秀二の方を見るが彼は全く私の方を見ずに厨房の方をずっと見ていた。
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