34人が本棚に入れています
本棚に追加
結婚記念日
山道を軽々昇るUSV。森の木々の間から見える街灯りが上に行くにつれて小さい粒になって広がっていく。
「二人きりでお食事行くのなんて久しぶりね」
「そうだな」と軽い返事が帰ってくると静寂が車内を包み込む。
今日は三才の息子を義理の母に預け秀二と二人で十年目の結婚記念日を祝う為にレストランに向かっているところだ。秀二は、結婚前から口数が多い方ではなかった。結婚前のデートをしている時は、こうして沈黙してしまう事が多々あった。でもこの状態が嫌だってことは無い。こういう時でも気を使わないで落ち着いて安心していられるからこそ、この人と結婚したんだから。
私は視線を左手の薬指のに向ける。シンプルなゴールドの結婚指輪を見る。
ふと、十年前プロポーズされた時の事を思い出し思わずクスッと思わず笑ってしまう。
あれは、プロポーズ当日だった。旦那は、事前に用意していた大事な指輪を渡す直前で無くすという珍事を起こしたのだ。
その後、結局指輪は出てこなくて、結婚式は代用品で挙げたんだけなぁ。
思い出に耽っているうちに目的地についた。
最初のコメントを投稿しよう!