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「本当にやるの?」
「いいじゃん。女子って占い好きだろ」
わかってないなぁと、ため息が漏れそうになり唇を結んだ。
どうして決めつけるのだろう。占い好きな女子が多いとしても、私は好きなわけじゃない。
付き合って一ヶ月半が経とうとしているのに、彼は私のことを全く知ろうとしてくれない。落胆と苛立ちが心にじわりと侵食していく。
私は占いというものを信じていない。当たり障りないことを言って、多くの人から共感を得ているだけだと思っている。昔ネットで何度か試してみた占いには愛され人間だと書かれていることが多々あった。
————嘘ばっかり。
電子画面に浮かんだ温度のない言葉を眺めながら、虚しい気持ちが広がる。占いだと私は愛される人らしいけれど、現実は苦いくらい異なっている。
「央介、私……」
「ほら、俺らの番だよ」
央介が強引に私の腕を引っ張っていく。今更阻止することはできなさそうだ。
新宿地下のショッピングモールの一角にある占いの館。胡散臭い雰囲気が漂っているが、私の彼氏——央介は突然「俺らのことも占ってもらおう」と言い出したのだ。
私たちの前に二組並んでいたので、案外人気があるらしい。
けれど央介も私と同じで興味があるわけではないはずだ。きっと彼にとってはただのおふざけでしかない。ノリでやろうぜって言っているだけだ。
「彩」
早く座れと促すように名前を呼ばれたので渋々パイプ椅子に座り、ちらりと占い師の顔を見やる。
真っ黒な服に身を包み、口元を布で隠している女性は色素の薄い大きな目でじっと私のことを見つめていた。
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