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空から光が落ちてきた──
教室の隅で外を眺めていた私は、迷いなく飛び出した。
「マキ、また残っていたのか!?」
ヨウイチとすれ違い「ごめん。急いでる」と告げる。
「廊下を走るな!」
シンドウの怒声を背に校舎を飛び出した。
私の住む場所は、都会とはほど遠い田舎町──否、"町"というより"村"。
標識には『日本一小さな村です、慌てずに』と書かれていて、自虐というより潔い。
立ち並ぶ高層ビルとは無縁の世界。あるのは雑木林、川、山、以上。
「はあっはあっ」
自転車を全力でこいで15分。目的地である『月山』のふもとに到着した。
この町……もとい"村"はずれにある『月山』は、この村と町の境目になっていて、トンネルを抜ければ"町"なのだ。
私はトンルネの脇にある簡素な階段を上がる。用があるのは、『月山』そのもの。
標高は高くなくて自然が多く残っている。バードウォッチング、花見に紅葉。四季折々、村のみんなを楽しませてくれていた。らしい。
あ、冬は立ち入り禁止だった。だったら三季折々? まあいっか。
考えているうちに、目的地に到着。展望台(と勝手に名付けている)茂みに、"光"が在った。薄暗いのも幸いしてすぐに見つかった。
私は"光"をそっと抱えた。ほんのりと温かいが、熱くはない。誰にも見つからないように、持参したバッグに"光"を入れて、山を下りた。
自分の部屋に戻ると、まず"光"をどうするか考えてビンに入れた。
フタを閉めちゃうと苦しいかな。と思って開けておくことにする。逃げちゃわないかな。紐か鎖……と思ったけれど、まあいいか。
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