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「ううん、着替えてる時もあるから」
「そうか、ごめん」
悪びれた様子もなく、ヨウイチはドアを閉めた。
日が昇る。
制服に袖を通し、学校に向かう。通学路と書かれたアスファルトには、誰もいない。
そもそも、この村には私とヨウイチ以外、誰もいないのだ。
無人の校舎。手入れのされていないグラウンド、廃校となっている学校。誰もいない教室。黒板の日直欄には、いつも私とヨウイチの名前が書かれている。
「廊下を走るな!」
シンドウはそれだけを繰り返す音声ロボ。体育教師の真似事か、竹刀に似せた筒を持っている。
「おはよう、シンドウ」
「廊下を走るな!」
それだけを繰り返す。シンドウという名は、誰かのイタズラか、胸元にマジックでシンドウと書かれていたから。
2-1の教室に入る。片隅に置かれた二個のカプセル。始まりはそう。ここから──
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