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暗くなるまで学校にいて、ヨウイチと決めた住居に帰る。
ずっと学校で生活していてもよかったけれど、『帰る』場所は必要だと提案されて、なるほどとも思った。
そんなある日、『月山』に光る落下物があった。
好奇心から足をのばす。過去映像では危険のない山だと説明されていたので、恐れはなかった。
山頂に近い茂みで、"光"を拾った。それは何かと言われても、"光"は"光"でしかなく、生物のようでもあり、無機物のようでもある。
ただそこに在るもの。空気と同じ、ただそこに在るもの。
ヨウイチに"光"のことを話さなかったのは、彼が私に対して隠し事をしているのを知っていたから。
だから私も彼に、隠し事をしたかった。要はシャクだったのだ。
ぼんやりと"光"を眺めていると、ふと、考えもしなかったことが思い当たる。
そういえばこの村……って。
ヨウイチが寝たころを見て、瓶に入れた"光"を持って、学校に行った。
私は瓶に入った"光"を持って、まず学校に向かった。鍵は当然、かかっていない。
「廊下を走るな!」
「借りるね、シンドウ」
筒を拝借し夜の村を歩く。昼間は太陽。夜は月の灯りと意外に豊富な電灯で、辺りは昼間並みに明るい。
『月山』のふもとに到着した。トンルネの脇にある簡素な階段──を素通りして、トンネルに入る。
この村には持ち運びのできる『明かり』がなかった。
あのソーラーカーだって、昼間にしか走っていない。なぜなら、ヘッドライトがついていなかったから。
無意識かつ本能的に、トンネルを入るのを拒んでいた
「"町"には僕らの求めるものなんて、何もないよ」
ヨウイチはそう言ったけれど、『月山』で"光"を拾った時みたいに、好奇心と衝動を抑えきれない。
トンネルの奥には、何があるのか。
"光"を頼りに、トンネルを進む。村にはあれだけ電灯がついているのに、トンネル内には一切ない。
漆黒の闇。"光"がないと、歩くことさえおぼつかない。
やがて突き当り。そこには出口ではなく、鉄扉があった。押しても引いても開かない。ドアのところに、小さなダイヤルキーがあった。
"光"を当てて、辛うじて見える数字の四桁を、なぜか脳裏に浮かんだ数字を入れた。鍵が開いた。
……さほど広くない空間に、モニタールーム。そして、教室に置かれたのと同タイプのパソコン。
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