光(仮)

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 全部思い出した。  人の体にのみ作用する兵器を拡散してしまったのは。  同じ研究員であったが優れた成果がでなくて、自暴自棄になり、"それ"を彼の研究成果だと思って、流出させたのだ。  ヨウイチはむしろ、それを殲滅するための研究をしていたとは知らずに。  前田洋一は、マキをかばい全ての罪を被った。よって、大量殺戮者として名を刻まれたのは、ヨウイチだったのだ。 「……ごめんね、ヨウイチ。私……とんでもないことを」  眠ったように見えるヨウイチの、首の後ろにあるボタンを押すと機能を停止した。  彼はとっくの昔に亡くなっていて、私が孤独に耐えられるように、そして私を誘導する役として、ヨウイチが残してくれていた。  あのトンネルのダイヤルキーは、0820。八月二〇日。彼の誕生日。  『月山』に"光"が落ちたのも、きっと……運命だった。    スマホを取り出し、録画モードにする。 「もしもこの記録を見ている人がいたら、みんなに伝えて。決して見てはいけないサイトがあるの。それは──」  私にできること。それは伝えること。伝えて続けていくこと。  そして私がヨウイチの研究を引き継ぎ、あの死のウィルスを殲滅する。  一生をかけての償い。取り戻せないし、許されないけれど。  希望の光を灯したい。
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