星落ちる帝都

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プープープー。クラクションの音がするのがここからでもかすかに聞こえる。 夜が更けても変わらない車の量がけたたましい。 昼と変わらぬ、いや、それ以上の明るさにももう慣れた。眠らない街、という称号もこの光景に比べたら軽いものだ。 ビルのヘリポートからはミニチュアの車が忙しなく動いているのが見えた。もう午前1時なんだけどな。 風が強くなってきた。騒音はもう聞こえないが、相変わらず世界は醜く光っている。大型ビジョンが視界に入るが、酷く低俗なテレビ番組を映し出していた。 ここは帝都。日本の首都だ。 この国で一番、人とものが集まりなんでも手に入る。不自由さ以外は。 そんな都合のいいフレーズが蔓延しているが実状とは違う。 人が集まる繁華街はとりわけ明るく賑やかだ。 通りを行く若者は都会特有の最先端のファッションを身にまとっていて奇抜だ。 ただでさえ頭が悪そうなのに、酒を飲み酔っているようだ。ガラの悪い口調と酒臭い赤い顔がバッドマッチしている。 漆黒のアスファルトにはあるべからざるシミがある。サラリーマンが吐いた吐瀉物が道端にこびりつき、かなりの年月が経っているのだろう。 この街は煌びやかなのとは対称に人間は醜く悲しい。 人が多いせいかもしれないけれど、個人個人が見えにくくなって、それ故に自分自身を律することが出来なくなっているように見えるのだ。 電灯が疎らで、ジジジジと音を立てる蛍光灯が燐火のようになっている故郷に帰りたい。そう思ったことは一度や二度ではない。 そんな地面が嫌になって、空の星に思いを馳せようとこのヘリポートに何度か足を運んだ。 しかし、空はただの暗闇だった。 故郷で見た金平糖のように散らばる星々はどこにもない。 それもこれもこの街が明るすぎるからだ。 起きなくてもいい夜に起きて、意味の無い動きをして、日が高く上った時に起きる。 馬鹿みたいだ。いや馬鹿だ。 ああ腹が立つ。何故こんなにも人間は愚かなのか。 故郷に居た頃は、夜になっても店が開いていることや、最先端の機器が金さえあれば手に入ることに憧れたが、この街はそんないいものでは無い。 だから、だから私は灯りを消す。
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