X12(最終回)

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ついにデストの剛腕に掴まってしまったアル。しかしその顔は笑っていた。 手に握っていた少量の鉄粉をデストの目に掛けたのだ。目に粉が入ったデストはアルを離し、のたうつ。大ダメージを負っていたアルはそのまま仰向けで倒れる。 ロトの元へ行き、最後のカイロを受け取るレオ。 ロトがヘルメットを渡しながら言う。 「これにカイロを開けな!」「はい!」 レオは集めたカイロをヘルメットに開ける。 「早くしないと、君の先輩がやられるぞ!背中は気にしないでいいわ。私たちが君を守るから!」「お、お願いします!!」「早く行きな!!」 パトカーのバリケードを乗り越えて、アルの元へ走る。 中央広場を突っ切るため、恰好の的となったレオは敵部隊に狙われるが、ゼットたち狙撃班が援護する。 「走れぇぇぇぇぇ!!」 鉄粉が入ったヘルメットを抱えてデストに立ち向かうレオ。足を踏ん張り、デストに大量の鉄粉を掛ける。しかし、タイミングが悪かった。デストの視力は回復し、強烈なストレートがレオを襲う。思わず目を閉じて死を覚悟するレオ。その時、アルの叫び声が聞こえてくる。 「させる…かぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 アルは最後の力を振り絞り、身体全体を武器にしてデストの腹に頭突きを食らわす。大量の鉄粉を浴びた部分が瞬時に錆び、アルの頭突きがメタルを砕く。 アルの身体はデストの腹部を突き抜け地面に転がる。 上半身と下半身に分裂したデストは絶命した。 ゆっくりと目を開き、アルの元へ駆け寄るレオ。 「アル先輩!!」 「…ナイス…ガッツだよ…」アルは気を失ってしまう。 ゼットたちも援護部隊を排除して駆け寄る。 「気絶しているだけだ。二人ともよくやった!敵を無力化したぞ!」 大きなプロペラ音が会場内に響き、軍用ヘリが到着した。来場者やスタッフを乗せ、都市部への輸送が始まった。 数日後… フラッシュタウン署 救急棟 アルが、ベットで目覚める。額には包帯、頬にはガーゼ。破壊された義手はそのままの状態でプロテクターが装着されていた。 {ふ…ボロボロだな…アタシ…。フラッシュタウン署のみんなは…無事かな…} 病室のドアがノックされ、腕に包帯を巻いたガイアとマリク、レオが入ってきた。レオとマリクが一目散に駆け寄る。 「アル!無事か!?」 「うん…なんとかね。マリクもガイアも無事で良かった…署は大変だったよね…」アルは俯いてしまう。 ガイアがアルの元に歩み寄る。 「正直、犠牲は大きい。だが、お前さんを責めるやつは誰もいない。胸を張れ。お前さんは沢山の異星人と地球人を救ったんだ。歴史的瞬間だぞ。自分の損得しか考えない「watch」が人助けをするなんて…」 「…一言多いんだよ…」 「そうだ。お前さんに合わせたい奴がいる」 ガイアに連れられ、隔離棟に到着するアル。 隔離棟には、重犯罪者たちが一時的に収容されているのだ。 その一室に、手錠を掛けられたスラムがいた。 「その顔は…覚えているぞ。女!」 「スラム…。あんたに聞きたいことがあるんだけど」 「何が知りたい?」 「スピカで女の子を撃ったのはあんたか?(#10参照)」 「あぁそうさ。あの子に依頼されてね。仕事を終えたら殺してほしいと」 「司祭たちの殺害…」 「あの子は、自らの命を犠牲にしてスピカの闇を葬った。たいした根性の持ち主だな」 「…そうかい…」 アルは、俯きながら立ち去った。 17:30 フラッシュタウン署 屋上 夕方の日差しがオレンジ色に照らす中、風に吹かれるアル。 タバコをくわえながら缶コーヒーとジンジャエールを持ったガイアが近付いてきた。「よぉ。また浮かない顔しやがって」 ジンジャエールをアルに渡して、近くのベンチに腰掛ける。 「寝覚め悪い話だけど、スッキリしたよ。あの子の意志がこんなに強いとはね」 「あぁ。その子は本当に共存を望んでいたんだろうな。そうそう、エリという人物からお前さん宛てに手紙が来ていた」 ガイアはアルに手紙を渡した。
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