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二
浴衣や甚平に身を包んだ人々の間を抜けて、ぼくは歩く。ぼくの手の上に乗る火の玉は、出店を見て火を大きくしたり小さくしたりした。リンゴ飴を美味しそうだと思ったり、お化け屋敷を怖いと思ったりしているのかな。
にぎやかなところから少し離れると、おじさん達が数人、大きな筒の横に集まっていた。人々は少し後ろでそれを見ていた。
「ほら、見てごらん」
ぼくは手を伸ばす。
おじさん達がスイッチを押すと、筒に火が点いてきらきらのぴかぴかが空に飛んで行った。
ぼくの手の中で火の玉は炎を燃え上がらせる。
「きらきらの光でみんなを包み込めば、きっと自信が付く。ふわふわ飛べるよ、これからも」
「ぼくにできるかなあ」
「大丈夫、大丈夫。今日はお祭りなんだもの」
ぼくは火の玉を両手で包み込んで、えいえいと力を込めた。これでこの子が飛んだ時、空一杯に光があふれる。
「飛んでけー!」
ちょっと待って。という声が聞こえた気がしたけれど、もう止まれない。ぼくは火の玉のことを思いっきり空へ投げた。ぐぐっとしゃがんで、両手を広げてジャンプする。
「ぱあん!」
ぼくの声を合図に、火の玉が空で花の形の光になった。見物していた人々の中で何人かが驚きの声をあげていた。「あっ、あれ」と、花がしぼんでできた小さな炎がどこかへ飛んでいくのを指差す人もいる。けれど、ほとんどの人はあの子の雄姿を見ることができていない。
もったいないよね、あんなにきれいな火なのに。
見えていないんだもの、普通の人には。気にしなくたっていいんだよ。もし見えていたら悲しいことが起こるかもしれないけれど、それはその時だよね。
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