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ことの真相
三学期を迎えた中央恵庭高校新聞部部室で、新入部員の高柳佳奈が西崎みはるに原稿を見せている。康永はまだ来ていない。
「みはる先輩! 私の小説いいでしょ。今度の新聞に載せてよ!」
「あ、あのね。お別れの時は寂しかったって話はしたし、データをもらってるのは本当だけどさ。くっついちゃうのは、その……、って、それ以前に私たちや嶋田先輩が実名な時点で載せられないわよ」
「呼び方とか変えたのになあ……」
「そういう問題じゃないの!」
「すみません……、でも寂しかったってことは、優希先輩が好きだったってことでしょ? せめて小説の中だけでもハッピーエンドにしようと思って」
「それは、ねえ……」
みはるが少し顔を赤らめたところで、部室のドアが開いた。
「あ、白井くん、来たわね」
ところが現れたのは、スラリと背の高い男の人でした。
「久しぶり」
「嶋田先輩、どうして急に?」
「いや、驚かせようと思って」
「ほおー、この人が優希先輩。あ、はじめまして、今度この部に入りました高柳と申します」
「はじめまして、嶋田優希です」
ひととおりあいさつを交わしたところで、彼は机の上にある原稿に気づきました。
「ん、これは何?」
「あ、そ、それは……」
「あの、見ないで下さい」
みはると佳奈が止めようとしましたが、彼は原稿を手に取ってパラパラとめくり始めました。そして、
「ごめん、みはると2人きりになりたいんだ。少しだけ席を外してくれるかな?」
「は、はい!」
佳奈は部室の外に出て、優希とみはるが残りました。
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