ただ、好きなだけ

1/9
1178人が本棚に入れています
本棚に追加
/332ページ

ただ、好きなだけ

「お前ってさ、『自分』が無いよな。何言っても『うん、そうだね』とかさ。」 え。 とある、休日。 普通にさっきまで笑顔でデートしていたのに… 「何処行きたい、何 食べたいとか、そういうの無いわけ?」 ショッピングの後、休憩で入ったカフェで 急に彼氏が吐き出すように喋り出した …… 「ほら、また何も言わない。」 「違っ、。」 何も思って無い訳じゃない 好きな人と一緒にいるだけで 何処に行っても 何を食べても楽しいと思うだけ それって、そんなに悪い事だった…? 「いっつも、ニコニコ笑ってるだけで 正直何考えてるのか分からない」 「…あの、」 「俺が浮気したって、そうやってヘラヘラしてんだろ?」 「……っ」 そう。 私は、彼が浮気しているのを知っている でも、それを問い詰めたら振られるのではないかと言えずにいた 「ごめん。俺、もう好きな人いる。ちゃんと自分の意見とか言える女性。」 ……っ、。 頭の中が真っ白になった 彼の言葉を 理解するまでに時間がかかる 脳が聞きたくないと訴えているかのように、。 「結局、最後まで 何も言わないんだな」 「待っ…」 私の最後の言葉は彼に届く事なく、店を出てしまった テーブルには、折れ目のついた千円札が置かれていた
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!