生意気な男

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部屋に着き、まずはバスタオルを渡すと 彼は意外にも 「俺…ベチョベチョだから玄関でいい。」 なんて言い出した 「そう?じゃあ、そこにいて。」 捨て犬を拾ってきたみたいな気分だ 着替えを済ませ、救急箱を持って来ると 彼はまだバスタオルすら使っていなかった 「何してるの?早く拭かなきゃ。」 「だって、あまりに綺麗なタオルだから汚したら…」 バカか! 彼からタオルを奪いガシガシと頭を拭いてやった 「あのね、時間ないの。ちょっと雑だけど許して」 彼を全体的に拭き上げると 犬みたいにブルブルっと頭を振った 「犬じゃないんだから…。ほら、額見せて」 彼の長めの前髪をそっと持ち上げると やはり、血が滲んでいる 「少ししみるかも。」 消毒をすると 彼が少し力を入れたのが伝わる 「えらいえらい。」 我慢する彼に子供扱いしながら、大きめの絆創膏を貼った 「よし。これで大丈夫。」 そう言って、彼を見ると 上目遣いの彼と目が合った 改めて見ると整った顔をしている 茶色のクリッとした目に 通った鼻筋 少し厚めの色っぽい唇 綺麗な白い肌 ……って、 何考えてるんだ私は。 「おねーさん、有難う。」 彼の声に我に返る 「あのね、毎朝おねーさん!って叫ぶのやめて?恥ずかしいから。あと、私 八坂。八坂 美月だから。」 名前を言うと、 彼は凄く嬉しそうな顔をした 「俺は、遼!! 大森 遼!!」 あー、そういや 前に女の子が甘ったるい声で遼くーんって呼んでたな…
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