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「あの、藤さん、これ何ですか?」 「リストラップだ。これを巻き付けることで手首が補強されて怪我の予防になるし、フォームも安定する」 「はぁ、……なんか、派手な色ですね」 「ペガサスレインボーの色だ。光栄に思え」 「は? ペガサス?」 「『聖獣戦隊ビーストイレブン』のメンバーだ。最強の力を持つがゆえに切り札として温存されていたが、最終回まで切り札を出す状況にならなかったために一度も出てくることなく終わった幻の戦士。その姿を見た者は幸運に恵まれるが、あまりの神々しさに目が潰れて失明するといわれている。ちなみに俺のリストラップはヤマタノオロチパープルの紫だ」 (それって実質ビーストテンじゃないか。切り札を出す機会がなかったって……もっと頑張れよ敵。だいたい失明してる時点で幸福じゃない。あとヤマタノオロチは聖獣じゃない) 心の中で言いたいことを並べたてるも、それを口に出す勇気は尚太郎にはなかった。黙っていると、藤は怪訝に首をかしげた。 「おい、なんでテンション上がらないんだよ。ペガサスレインボーなのに」 「……僕、ビーストイレブン観たことないんです。戦隊もの自体あんまり興味なくて」 「ビーストイレブンをそのへんの戦隊ものと一緒にするな。全然違う。いいか、彼らはロボットに乗って戦わない。なぜならメンバーのキャラが濃すぎて協力できず合体できないからだ。しかし個々の力は強いから毎回スタンドプレーで敵は倒せる。『とにかく個性を大事に』という概念を我々世代に植え付けた崇高な教育番組なんだ」 「はぁ……」 話に乗ってこない尚太郎に、藤は残念そうに肩をすくめた。 「俺より3つ下ならビーストイレブン世代に入ってるから当然知ってると思ったんだがな。……まぁいいや。今度ブルーレイBOX貸してやるから観てみな。ハマるぜ」 喋りながら、今度はチャンピオンベルトのようなものを尚太郎の腰にぎゅっと巻く。 「うっ、きつ……これ、何ですか?」
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