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「年季が入った体型のようですが、その脂肪量はいつから維持されているのですか?」 「……物心ついたときには太りぎみでしたが、周りにからかわれるようになったのは小学6年生からです」 「年齢を訊いてもよろしいですか」 「(早生まれの)23歳です」 「長い経歴をお持ちで」 「……」 口をへの字に曲げた尚太郎にはかまわず、藤は問いを重ねる。 「これまで腰を痛めたり捻挫や骨折をしたことはありますか?」 「いえ……」 「一度も?」 「はい」 藤はなぜか胸をピクピク動かした。 「ちょっとこれにぶら下がってください」 側にあるチンニング(懸垂)スタンドを指され、尚太郎はむっすりしたままバーにぶら下がった。 藤はサンバのリズムで左右の胸をダイナミックに動かしながら仁王立ちでそれを見ている。 「あの、いつまでこうしてればいいんですか?」 「遠慮なくお好きなだけどうぞ」 「もう無理です。手が痛いです」 「……2分か」藤はリズミカルに弾ませていた胸をぴたりと止めた。「降りていいですよ」 着地した尚太郎は、真っ赤になった手にふうふう息を吹きかけた。幼いころ亡き母が、打撲傷に息を吹きかけてジンジンした痛みを冷ましてくれたことを思い出しながら吹いていると、その手に「はい、」と金属製の長い棒を乗せられた。 「好きな食べ物はなんですか?」 脈絡のない質問に、戸惑いながらも答える。 「……父さんの料理、です。カツ丼とカツサンドとカツカレーが絶品なんです。市販のものならコンビニの唐揚げと、ケンタッピーのフライドチキンが好きです」 「……わかりました。では、そのバーベルシャフトを肩に担いでスクワットしてください」 なにが「では」なのかわからない。 ますますむっとした尚太郎は意を決してぼそぼそと訴えた。 「……いや、僕は痩せたいんです。そのためにはスクワットじゃなくて、やっぱりランニングマシンとかで汗を流さないと……」 「有酸素運動……我々の業界でいうカーディオをするにしても、筋トレ後のほうが効率的に脂肪を落とせますよ」 「え、そうなんですか?」 「はい。けれど長時間のカーディオは、脂肪とともに筋肉も分解して燃焼するため、代謝が落ちます。なのでカーディオをするのであれば、軽く息が切れるくらいのペースで45分程度にしてください」 トレーナーらしい発言に、尚太郎は素直に感心した。そして「効率的に脂肪を落とせる」という魅力的なワードに、萎びていたやる気が復活した。 「わ、わかりました。とりあえずスクワットやります!」 頑張って痩せるぞ!  意気込んで、シャフトを首の後ろに通して肩に担いだ。棒だけなのにズシリと重い。我慢して腰を下ろそうとしたとき、藤が制止をかけるように手のひらを突き出してきた。 「……、ですか……」 「藤さん?」 「ただ体重を落とすだけで満足ですか?」
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