十一

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「大盛況だな。おまえのおかげで凄まじい売り上げになりそうだ」 「それはいいけど、正直疲れるよ。せっかくのオフなのに……」 「親孝行と思って頑張りな。それにしても一段とデカくなったなぁ。105kg、体脂肪率8%ってとこか」 「うん、当たり。ヘビー級だとバルク制限しなくていいから、つい増やしすぎちゃって……でも110kg超えたら急激にスピードダウンするから、これ以上増えないように頑張んないと」 「ははは、相変わらずナチュラルに嫌味なやつだな。ボディビルの大会にも出やがれこの野郎」 「俺はボクサーだから、ボクシング以外の勝敗の場には上がらないよ」 (藤さん、来宮選手と知り合いだったんだ。すごく仲良さそう……) 来宮選手は既婚者だとわかっていても、つい焦りを感じてしまう。微妙な顔をしている尚太郎を、来宮選手がちらっと見た。 「そっちの彼は?」 「俺の愛弟子。尚太郎っての」 「え、弟子って……パーソナルのお客さんじゃなくて?」 「客じゃない。プライベートで面倒見てるんだ。いろいろと」 「えっ、藤くんが!? その子そんなに見込みがあるの?」 「見込みがなきゃ、自分の時間を削って掘らせてまで世話しねぇよ」 「へぇ~」 「んじゃ俺ら行くわ。売り子頑張れよ、ケルベロスブラック」 「うん、そっちも頑張って、ヤマタノオロチパープル」 二人はニヤリと笑い、同時にしゅばっと構えた。 来宮選手は肉食獣のガオーポーズで、 「聖なる牙で眠らせてやる、ヘルファングショット!」 対する藤は、両手を頭上で絡めて腰をひねったポーズで、 「正義の鞭の裁きを受けよ、ギルティスネークウィップ!」 一瞬にして凍りついた空間に、温かみのある声が響いた。 「頑張ってくださいね、応援してます」 吉田会長が、尚太郎に向けてにこやかに手を振った。その春風のような雰囲気に、固まっていた周囲の人々の表情がゆるゆると和んでいく。尚太郎も我に返ってぺこっと頭を下げた。 「は、はい、頑張ります!」 「ほら、智典、いくぞ」 「我が麗しのマーメイドピンクよ、実は、君にプレゼントがあるんだ」 「え……何?」
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