十一

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KBCでは、体重や身長などのクラス分けはなく、各部門の出場者全員が同じステージに立って審査される。 流れとしては、まず予選に出る12名がピックアップされ、予選、決勝へと進む。 ボディビル部門が終わったあと、フィジーク部門のピックアップ審査、予選、決勝が行われる。 年齢分けもされていないので、尚太郎の前で受付しているのは10代らしきピチピチマッチョで、後ろにいるのは50代らしきナイスミドルマッチョだ。 緊張しながら受付をして、数字が入った缶バッジを受け取った。65番。これが尚太郎のエントリーナンバーだ。 その後、まだ客を入れていない観客席に集められてKBCスタッフから注意事項などを通達され、バックステージに移動した。 選手たちはチューブやダンベルを使って最後のパンプアップをしたり、着替えなどの出場準備をしている。 彼らの前に設置されている大きなモニターには、現在行われている開催式の様子が映っている。主催者であり審査員長でもある楠木会長があいさつ代わりにデッドリフト500kgを挙げている。大盛り上がりの歓声が、ステージ裏にまで響いてくる。 「……楠木会長、すごいですね」 「だろ」 誇らしげな藤に、尚太郎はむっと口を尖らせた。 「自分のことみたいに喜ばないでください」 「なんだよ嫉妬してんのか?」 「……しちゃダメですか」 藤は苦笑して、赤飯おにぎりを尚太郎の口につっこんだ。 「ふ、ふがふが(な、なにするんですかっ)」 「おまえが家に帰ってる間に作ったんだ。食え」 「ふがふがふが(なんで赤飯なんですか)」 「俺たちが童貞と処女を卒業したお祝い」 「ふが……(お祝い……)」 「それと、減量で萎んだ筋肉にカーボを入れて身体を張らせるため」 そういうことか……と思いつつ、尚太郎は咀嚼した。そこまで厳しく炭水化物を制限していたわけではないが、それでも減量を続けてきた身体には、ことさら美味しく感じられる。毛細血管の隅々まで行き渡っていくようだ。 「うぁぁ、おいしぃぃ」 「俺とどっちがおいしい?」 「ッ! げほ! ごほっ」
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