第一章 ヒーロー

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原田がベンチから出てきた瞬間、一塁、ライト側から歓声が起こった。 (凄いな~、やっぱりホームだと迫力が違うな。) プロ6年にして、初のホーム球場でのヒーローインタビューを前に原田はかなり緊張していた。 原田はファンの声援に軽く手を振りながらインタビューアーの元へと向かっていった。 「放送席、放送席~今日のヒーロー見事5安打無四球完封勝利を挙げた原田選手です!!」 インタビューアーの紹介で更に沸く場内。 原田は少し照れながらファンの声援に答えた。 「原田選手。初回の3球で三者凡退。見事でした。」 アナウンサーはそう言って原田にマイクを向けた。 「ありがとうございます。自分でも正直テンポ良すぎて驚きました。」 「でも、あれでピッチングの波に乗って試合を作りましたね。」 「まぁ、今日は守備に何回か助けられましたけどね。」 自虐的な事を言う原田にアナウンサーは半ば苦笑した。 「初完封のウィニングボールはどなたに渡しますか?」 少し困ったアナウンサーは話題を変えた。 「彼女と言いたいところですが、いませんので、とりあえず母にでも渡しときます。」 サラリと皮肉のこもったウケ狙いのジョークを言ったが、チーム内では石井コーチくらいにしか面白さが伝わらなかったようだ。 「最高の親孝行ですね~。では最後に一言。」 「今後とも応援よろしくお願いします。」 帽子をとってお辞儀をする原田。 「以上、原田選手でした。」
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