カメラ越しの憂鬱

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ガチャ 開閉する度に鈍い音をたてるこのドアには、いつかの卒業生の可愛らしい丸文字で、『写真部』と控えめなラベルが貼ってある。 「……つかれーす」 俺はいつものように口先でぼそりと呟きながら、部室に足を踏み入れた。 「あ、久世(くぜ)くん」 「お疲れさまぁ」 「こら後輩! ちゃんと挨拶しろー」 部室には、2年の先輩が3人。 部員は他にあと5人だけ。 気兼ねない先輩達とまったりとした雰囲気が、案外気に入ってる。 父さんがカメラ好きだった影響もあって、俺は幼い頃から写真が趣味だ。 父さんから譲り受けた、小学生には似つかわしくないデカいカメラを首から下げて、風景や動物を撮ったりするのが昔から好きだった。 高校に入って3ヶ月、 すでにこの場所は俺にとって、クラスよりも居心地のいい空間になっている。
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