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「おーぅ、やってるか」
ボリボリと頭を掻きながら入ってきたのは、
シマセンこと島崎先生、この写真部の顧問だ。
「なんだ、シマセンか」
思わずがっかりした声を漏らしてしまって、すかさずシマセンに頭を小突かれる。
「なんだとはなんだよーマサムネ!」
シマセンはウチのクラスの担任でもあるから、こんな砕けた会話も許されてる。
「お前ら、フォトコンの写真提出するの忘れんなよ。終業式の日までだからな」
一人一枚以上! 絶対だぞー!
シマセンは掲示板に資料を貼りながら俺達に念を押した。
フォトコンとは、地元に本社がある大手カメラメーカー・サンフィルムが企画している、フォトコンテストのことだ。
毎年この時期に開催されていて、我が剱崎高校の写真部は、全員何かしらでエントリーするのが慣例らしい。
「誰かが入賞できたら、シマセンが部員全員に焼肉おごってくれるってよ! 皆、頑張っていい写真撮ろうぜ~」
「おいっ、こら待て蕪木!
俺そんな事一言も言ってないからな!?」
しらばっくれる先輩と、慌てる先生。
そんなやり取りを横目に笑いながら、俺は、さりげなく窓の外に視線を向けた。
1階にあるこの部室からは、中央グラウンドが広く見渡せる。
ピッ
そこには、短い笛の音とともに身軽な体をまるで飛ぶように軽やかに走らせる、詩乃がいた。
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