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「マサムネ~、早く早く!」
真新しいランドセルを揺らしながら、俺に向かって手招きをする女の子。
あれ?
小学生の頃の、詩乃……?
なにこれ、一体どうなってんだ……
「あ、まっ、待って」
そういう俺も、気がつけばピカピカの黒いランドセルを背負っている。
よく見るとここは、小学校へ向かう通学路だ。
キョロキョロと周りを見渡しているうちに、詩乃は、もう随分と遠くに駆けていってしまった。
そうだ、この頃から飛び抜けて足が早かったよな。
こっちに向かって何か言っているけど、遠くてよく聞こえない。
「え? なに……詩乃ちゃん、もう一回言って」
……そういえば、いつから詩乃のことを呼び捨てで呼ぶようになったんだっけ。
小学生の俺の口から自然と発せられた懐かしい響きに、少し気恥ずかしさを感じながらも、俺は急いで詩乃の背中を追いかけた。
「待って! 行かないでよ、詩乃ちゃんっ!」
いかないで。
きみのいちばんちかくに
ずっといたいんだ……
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