特別な女の子

5/8

275人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
「……それより、なんで詩乃が家にいるの」 「だって、今日命日でしょ? お父さん。 お線香あげに来たんだよ」 「あぁ、覚えてくれてたんだ」 「当たり前!」 ―――うちの父さんが病気で亡くなって、今年でちょうど10年経った。 詩乃は毎年、父さんの命日にはこうして仏前に会いに来てくれている。 詩乃は、ウチの父さんによく懐いていた。 小さい頃から俺と兄妹同然に過ごしてきた詩乃にとってもまた、ウチの父さんは第二の父的な存在だったんだろう。 父さんが死んだとき、 母さんは、声にならない声で泣き崩れた。 母さんが泣くところを初めて目の当たりにした俺は、頭では理解してるつもりだけど気持ちが追い付かず、病院でもずっと泣けずにいた。 当時、俺はまだ6歳だった。 あとから親戚に聞いた話では、まるで人形のように表情を失って、ただただ呆然としていたらしい。 そんな俺に片時も離れずついていてくれたのが、 他でもない、詩乃だった。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加