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「おじさん聞いて! 私ね~高校総体のメンバーに選ばれたんだよ。
100メートルなんだけどね、一年生では一人だけなんだよ! すごいでしょ? それとね~……」
仏壇に向かってマシンガントークを繰り広げる姿も、10年目ともなると笑える光景だ。
微笑ましくもあるその後ろ姿を眺めながら、麦茶に口をつけていると。
「あっ、そうだ!
おじさんの息子、大切な形見のカメラで女子を盗撮しようとするの、どうにかしてくれません?」
聞き捨てならない爆弾発言に、飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「グッ、ゴホッ……
盗撮!? なんだよそれ、するわけないだろ」
「えー、してました! 私、目良いんだからね」
そう言って詩乃はニヤッと笑いながら、指で丸をつくって目元に当ててみせた。
それはまるで、カメラのレンズのようで……
「あ……!」
あの時……やっぱり気づいてたのか!
「……あのね、父さん……念のため言っときますけど、俺、決して犯罪なんてしてないから」
生きてたらゲンコツの一つでも食らいそうだ。
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