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「あーぁ、なーんで夏休み目前だというのに、こんなことしてるんだろぉ」
机に積まれた資料の山を前に、武田が項垂れて嘆く。
「そりゃ、シマセンの授業サボったからだろ」
パチン
淡々とホッチキスを動かしながら、俺は冷めた目でそれを見下ろした。
「サボったんじゃなくて寝坊して遅刻な!」
「結果同じだからそれ」
ワーンと泣き真似をして机に突っ伏した武田を余所に、俺は次々と資料の束を留めていく。
たまたま一緒に居ただけで道連れになった、俺の身にもなれよな……ったく。
放課後の教室で、男二人黙々と作業……
いくら暇とはいえ、なかなか悲しいもんがある。
「全クラス分とか拷問かよ……!
あーーーっちょっと休憩しね? 飲み物奢らせてもらいますんで!!」
「んじゃ、カフェオレ」
「了解!」
一向に終わりが見えないことに業を煮やした武田が、財布を片手に購買へ向かう。
「んーっ」
武田の背中を見送りながら、俺も背筋を伸ばして手を休めた。
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