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「あっ! 今撮ったな!?」
「詩乃」
「だからなぁに」
「詩乃…………の、頭に虫が……」
俺がぽつりと呟くと。
「え!? やっ! いやーーっ取って取って」
大の虫嫌いの詩乃は、頭を振りながら手をバタバタとして騒ぎだす。
「かわい……」
必死に笑いを堪えてたら、つい、心の声のほうが漏れてしまった。
「ごめん。嘘ついた」
「……はっ、え……うそ!?」
ふざけんなー!と腕を振り上げる詩乃をかわして、すかさずその手を掴んだ。
詩乃の手を握るのなんて、もしかしたら父さんが死んだあの日以来かもしれない。
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