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ガラガラ
「おーすお待たせ……ってあれっ! 皆川?」
―――俺の決死の一言を見事に遮ったのは、
購買から戻ってきた武田の呑気な声だった。
「……っ武田くん!」
驚いた拍子に、詩乃が俺の手を振り払う。
至近距離で不自然に背を向け合う俺と詩乃を見て、武田はすぐに『マズい』という顔をした。
「あ……! や、ごめんっ!
俺、邪魔しちゃった感じか!?」
慌てて後退りする武田に、詩乃が大きく首を横に振る。
「や、だなーそんなんじゃないよ! ね、正宗!
……私、部活戻るから、じゃあね」
普段より早口でよそよそしい言葉の端々から、俺との仲を誤解されたくないと聞こえてくる。
詩乃はこちらに顔を向けることなく、足早に教室を出ていった。
詩乃の足音が、廊下の向こうに消えていく。
俺は無意識に止めていた息を吐き出して、ガシガシと襟足を掻き乱した。
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