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「家族愛みたいなもんなんだよ、あいつにとっては」
「家族愛か……付き合いが長いが故に、なかなか難しいってことか。でもお前らお似合いだと思うよ。お互いが唯一無二の存在って感じするもん。うまくいってほしいわホント」
武田がジュースを片手に真剣な顔でうんうん、と頷く。
「武田、お前って……
結構恥ずかしいことズバズバ言うのな」
こんな話を誰かにするのは初めてで、妙に照れくさい。
俺は冷たいカフェオレを一気飲みして、火照った顔の熱を逃がした。
「……よし、やるか」
「おっ? なになに!?」
「……資料作成だよ。まさか忘れてないよな」
目の前には、まだ未処理の資料の山。
「うげ……!」
「とっとと終わらせて帰ろう」
詩乃は、俺の言いかけたことに気づいただろうか。
―――“…………だ、俺……詩乃のこと”
握った手が離れる寸前、
詩乃の小さな手のひらが、僅かに震えていた。
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