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シマセンから受け取った、撮影する部活リストを眺めながら、まだ日が高い帰り道をだらだらと歩く。
一番最後に"陸上部" の文字。
何気なくその上を指でなぞって、無意識にため息が溢れた。
―――あれから、
詩乃は明らかに俺のことを避けている。
暇さえあれば遠慮なしに家に来ていた詩乃が、ここ数日パタリと来なくなって、母さんにも「あなた達、喧嘩でもしたの?」と聞かれる始末だ。
あの日……どうしても気持ちが抑えきれなくて、詩乃の腕を掴んで引き寄せた。
長年拗らせた想いを告げかけた。
詩乃にとって、それは俺を避けるには充分すぎる行動だったってことだ。
今までただの幼馴染みと思ってた奴に、
男とも思ってなかった奴に、
突然あんなことされたら……そりゃ警戒するよな。
わかってたはずなのに。
俺が行動をおこすということは、今までの関係ではいられなくなるって。
10年間積み上げてきたものを全部壊すかもしれないっていう覚悟で、一歩踏み出したはずなのに。
いざこうやって距離をとられると……やっぱり辛い。
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