笑顔にしたいのに

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夏休みに入ったからって、特にこれという予定もなく。 「寂しい青春ね」と母さんからトゲのあるお言葉を頂戴したけど、ないものはないんだから仕方ない。 寝る前になると詩乃のことを考えてしまって、なかなか寝付けない日が続いてる。 今日も寝不足のまま、昼過ぎまでダラダラと自室で過ごしていた。 さすがに喉が乾いてきて、ようやく着替えて一階のリビングに降りていく。 「あ……、おそよう。もう14時だよ」 そんなこんなで、思いの外アッサリと、 今、詩乃が俺の目の前にいる。 「お……」 ぎこちなさを残しながらも普段通りに話しかけてきた詩乃に対して、俺は、一瞬言葉に詰まってしまった。 面と向かって話すのがあの日の放課後以来、というのもあるけど、それだけじゃない。 そんなことが吹っ飛ぶくらい釘付けになったのは…… 藍色の生地に菖蒲柄の大人っぽい浴衣に身を包んで、 髪をお団子にまとめた詩乃の姿だった。
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