笑顔にしたいのに

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「正宗、あんた何時間寝てんのよ! ねぇ見て、詩乃ちゃん可愛いでしょ? これから部活のお友達と神社のお祭りですって」 母さんが後ろで帯を整えながら言う。 「可愛い」 ぼうっとしたまま見惚れていたら、何も考えずに口から心の声が零れてしまった。 「あっ……いや、」 やべ……俺、なに言ってんだ…… 「……ありがとう」 詩乃が珍しく素直に受けとるから、俺もそれ以上弁解できなくなってしまった。 「お母さんにお祭りに行くって言ったら、おばさんに着付け頼んでくれてたみたいで。 私もさっきまで知らなかったんだけど……」 浴衣も借りちゃった。と袖を持ち上げてみせる詩乃。 道理で、着付けの資格を持ってるウチの母さんがやたら張り切ってるわけだ…… 「……祭り、今日だっけ」 近所の神社で行われる小規模な祭り。 小学生の頃は、毎年詩乃と一緒に行っていた。 そんなことより…… ……ダメだ、直視できない。 浴衣姿の詩乃が、めちゃくちゃツボ過ぎて。
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