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「……ごめん、ありがと。もう行くね」
詩乃はそそくさと体勢を直すと、神社の方向へ歩き出す。
俺は、詩乃の背中を大声で呼び止めた。
「待てって! そんな危なっかしいカッコで、一人で行かせられな……」
俺が言いきる前に、詩乃が勢いよく振り返った。
「急に女の子扱いするのやめてってばっ……! どうしたらいいかわからなくなる……」
「はぁ……? 詩乃は最初から女の子だろ」
「そういうことじゃなくて!」
ほんの数秒、気まずい沈黙が流れる。
あぁ、どうしてこうなっちゃうんだよ……
「…………この間の、教室でのことだけど」
少しの間を置いてそう言うと、
詩乃はハッと顔を上げてこちらを見た。
え?
なに、その顔……
頬と耳を紅潮させて、少し困ったような表情。
俺と目が合うと、慌てて視線を逸らす。
「わ、忘れた! なんのことだっけ」
「……だから」
「いいっ、今言わなくていいからっ……!」
真っ赤な顔をブンブンと横に振る詩乃。
全力で拒否されてるのに、
その表情が俺を勘違いさせそうになる……
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