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ふと、詩乃の目線が俺を通り越して後ろに向いた。
「あっ詩乃だ~!」
「ホントだ、おーい!」
陸上部の友達らしき二人が、同じく浴衣姿で詩乃に手を振っていた。
「……あ」
詩乃も慌ててそちらに手を振る。
「家ここだったんだね! 今出たところ?」
「う、うん」
二人の視線が、必然的に隣にいた俺にも向く。
「えっと、久世くん……だよね? 1組の」
「詩乃の幼馴染みくん! へぇ~本当にすぐ近くに住んでるんだ」
ペコリとお辞儀をされて、俺も「どうも」と小さく会釈した。
二人とも顔は見たことあるけど、クラスも違うし、もちろん話したことはない。
「一緒に祭り行く友達?」
「うん、そう」
「じゃあ……俺はここで」
さすがに友達がいる前で、さっきの話の続きなんて出来ない。
俺は、詩乃に巾着を手渡すと踵を返した。
「あ、ねぇ待って! 久世くんって写真部だよね?」
家の門に手をかけたところで、友達の内の一人に呼び止められる。
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