彼女にとって俺は

5/10

275人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
SHRを終えた教室には、雑談する声が飛び交う。 俺が移動教室の準備をしていると、後ろのドアから不意に名前を呼ばれた。 振り向くと、リーダーのノートを顔の横で揺らしてる詩乃の姿。 「マサムネ~! これありがとー」 「…………詩乃、声デカい」 よく通るその声に、近くにいた数人のクラスメイトがちらりとこちらを見た。 そんなことは全く気にしてない詩乃は、 「ね、ね、昨日あの漫画発売日だったよね? もう買った?」 と机越しに身を乗り出してくる。 「……買ったけど」 「やった~!じゃああとでそっちの家行くね」 「はいはい」 「また夜にね」 満足そうなホクホクとした笑顔で、二つ隣の教室に帰っていく詩乃。 こういう天真爛漫さが、周りから可愛がられる所以(ゆえん)でもあって、 俺が……彼女に惹かれてる部分でもあるんだけど。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加