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「誠実……ですかね」
「お前のいいところだろ。写真にも表れてるよ。だから、見る人にもちゃんと伝わるんじゃねぇか?」
珍しく真面目なシマセンの言葉に、俺は思わずドキッとした。
あの日……一枚だけ撮った、詩乃の写真。
実は、あのあと締め切りギリギリで、フォトコンテストに応募していたから。
俺の応募した写真を知ってか知らずか、嬉しそうに口角をつりあげたシマセンは、俺の背中をバシンと強めにひっぱたいてきた。
「うっし!次の陸上部で最後だな」
「いって……」
本気でヒリヒリする背中を擦りながら、
俺は、ふっ、と小さく笑ってしまった。
「シマセン……ありがと」
「あぁ? 何が?」
「……なんでもない」
ファインダーに映る詩乃にも、
目の前にいる詩乃にも、
俺は……誠実でありたい。
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