誠実でありたい

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「じゃあ、よろしくお願いします」 「久世くんよろしく!」 陸上部の監督に挨拶を済ませ、俺はカメラを構えながら練習中のグラウンドに足を踏み入れた。 少し離れたところでスタートダッシュの練習をしている数人の中に、詩乃はいた。 こちらに視線を向けることなく、真剣な表情で練習をしている。 俺も自分のやるべきことに集中して、練習風景をカメラに収めていく。 一段落したところで、俺とシマセンは集合写真を撮影するための準備を始めた。 練習に切りのついた部員から、休憩しながら続々と集まってくる。 俺は、詩乃の居る方にさりげなく視線を向けた。 すると詩乃もまたこちらを見ていて、俺に気づくと気まずそうに一度視線を逸らした。 だけどまたすぐに目があって、 詩乃は、腰の辺りで控えめに手を挙げた。 「……ふっ」 その仕草がやたら可笑しくて、俺は同じように返しながらも小さく笑ってしまった。 あー……可愛いな。 人前だというのも忘れて、完全に緩みきった顔をしていたことに気づいて、慌てて咳払いをする。 少し前までは、詩乃のどんな行動や言動にも、ポーカーフェイスを貫けてたはずなのに。
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