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「……っごめん!」
しまった、とすぐにその手を離す。
詩乃の友達は、目を丸くして瞬きを繰り返した。
「私こそごめん……でしゃばっちゃった」
あぁ、何やってんだ俺……
逆に謝らせてどうすんだよ。
俺は大きく息を吐き出すと、もう一度二人に向き合った。
「俺は何聞かれても構わないんだけど……このことを詩乃に問いただしたりするのは、できればやめてやって。
あいつは俺のこと、そういう風に思ってないからさ。
その……俺の………“一方通行”だから」
自分の言葉に、頭を殴られた気分。
いつまでも一方通行のままでいいのかよ。
……いいわけない。
俺が変わらなきゃ、何も変わらない……
「ひゅ~! 男前!」
横目に一部始終を見ていたらしいシマセンが、俺が一人になるや否や口笛を鳴らして茶化してくる。
「……どこが? 最高にダサいでしょ」
急に気恥ずかしさと居たたまれなさが込み上げてきて、俺は誤魔化すようにそのメタボな脇腹にジャブを打ってやった。
「おわっ、やめろっ!」
シマセンは身を捩っておどけたあと、ふと穏やかな表情になって、そしてニカッと白い歯を覗かせた。
「自分の気持ちにも誠実なヤツは、ダサくたって最高に格好いいと思うぜ!」
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