一人の男として

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あの時、見られてたのか。 というか…… なに、その態度。こんなのどうみたって、 「……ヤキモチ?」 「なっ! なんで私が正宗に……!」 詩乃が、俺の言葉にカッと顔を赤くして勢いよく立ち上がった。 「そういうふうに聞こえたから」 「違っ……! だって私たち」 「幼馴染み、だろ?」 「そーだよ、わかってるのにからかって……」 「からかってなんかないから!」 思わず声を荒げてしまって、詩乃がびくんと肩を震わせる。 「……ごめん、でも……俺本気だよ」 「ほ、ほんきって」 「詩乃のそれが、ヤキモチだったらいいのにって、本気で思ってる」 俺は椅子から立ち上がると、詩乃の傍へ歩み寄る。 後退りする詩乃に構うことなく、俺はその小さな手を取って、きゅっと握った。
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