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「この間、教室で俺がこうしたとき、嫌だった?
……今も、何とも思わない?」
「……え」
「詩乃が……昔から俺のこと、ただの幼馴染みとしか思ってないことも、何の意識もしてないことも知ってる。だけど…………俺は違うから」
詩乃は、黙って俯いたまま、俺に握られた手をじっと見つめてる。
「……ちゃんと一人の男として、
詩乃の目に映りたいって、ずっと思ってたよ」
その手に少しだけ力を込めて。
俺は、頭一つ分の距離にいる詩乃を静かに見下ろした。
10年前には詩乃の方が大きいくらいだった身長も手の大きさも、いつの間にか俺が追い越して、今ではこんなに差がついていたなんて。
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