一人の男として

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「…………そ」 数秒の沈黙を破った詩乃の声は、少しだけ掠れて、震えていた。 「……っそんなの! もう、とっくに意識してるってば……」 「…………え」 「してるから、困ってるんじゃん……」 俺の手のひらの中で、詩乃の小さな手がきゅっと力をこめて握られた感覚がした。 「嫌じゃ、ないから……困ってるんじゃん……」 名前を呼ぼうと口を開くけど、喉の奥がじん……と痺れたように収縮してうまく声が出ない。 ねぇ詩乃。 今、何て………… 俯く詩乃の表情は、横の髪が隠してうまく見えない。
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