一人の男として

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「……しの」 ようやく絞り出した小さな声。 それに応えるように顔をあげた詩乃は、キッと俺を睨み付けた。 鋭い視線とは裏腹に、瞬きしたら溢れ落ちそうなほど涙を溜め込んだ瞳で、耳まで真っ赤にして唇を噛み締めている。 その姿は、今まで見てきたどんな詩乃とも違った。 「……いや、だった……」 「え」 「撮影のこと、私だけ知らなかったの嫌だった! 私の友達の手を握ったのもなんか嫌だった! それに、正宗が他の部活の女の子にもカメラ向けてると思ったら………… ……誰にでも向けるわけじゃない、私だからって、 言ってたのに……って」 最初こそ捲し立てる勢いだった詩乃の声は、みるみるうちに小さくなっていく。 しまいには、詩乃は自分の口を両手で覆ってしまった。
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