一生のお願い

4/6

275人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
入賞できるなんて思ってもみなかったし、ましてや優秀賞なんて…… まだ、信じられない。 ……ヤバい、心臓が早い。 蕪木先輩と別れて、人がまばらな教室で俺は静かに興奮を抑える。 封筒の中の書類を見直してみると、入賞作品は、サンフィルムの本社に併設されてるギャラリーに一ヶ月展示されるようだった。 詩乃…… 勝手に応募してたことを知ったら、何て言うだろうか。 間違いなく怒られるだろうな。 でも、後悔はしてない。 あの写真は…… 俺の目から見た彼女を、全て物語ってるんだ。 俺は、荷物もそのままに教室を飛び出した。 真っ直ぐグラウンドへ向かって、ただただ走る。 運動がめっきりダメな俺は、すぐに息が上がって、足が縺れそうになる。 だっさいな、ほんとに。 だけど……ろくに行動しないで傍観者でいた昨日までの俺よりは、ずっとマシだ。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加