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「な……っえ……なに、これ……!?」
声のした方へ振り返ると、そこには詩乃が立っていた。
汗ばんだ額に張り付く髪を手で気にしながら、状況を理解できない様子できょろきょろと視線を泳がしてる。
そりゃそうだよな……わけわからないよな。
「……よかった、来てくれて」
「だって……正宗が一生のお願いとか言うの、初めてだったし……」
詩乃は写真と俺を交互に見ながら、大きな瞳を揺らす。
「……詩乃、ごめん。
あのときの写真…………賞取っちゃった」
てっきり、「勝手になにしてんの!」「恥ずかしいからやめてよ!」と返ってくると思って身構えていたけど、詩乃からリアクションがない。
困ったような、照れたような、少し泣きそうな、複雑な表情で写真を見つめている。
「い……、としい、ひと……」
詩乃は、消えそうな声で小さく呟いた。
【いとしいひと】
それは、俺がこの写真につけたタイトル。
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